おとくにの職人…P14

乙訓で活躍する職人さんにインタビュー

三代目は、フェードカットを極めた凄腕理容師。

 フェードカットとは、襟足からトップへいくにつれ地肌から髪の毛の黒色へと、なだらかなグラデーションをつくる刈り上げのこと。硬派な男らしさを出せることが一番の魅力で、オシャレに敏感な若者世代から渋い年配にまで、最近人気のヘアスタイルです。

 野村さんは、過去様々な競技大会で怒濤の連続優勝を果たした凄腕理容師です。京都府理容組合の最年少講師としても活躍。京都府下で数多くの講習を行っています。

 実家は祖父、父と二代続く理容店。野村さんが三代目です。中学、高校時代は野球に没頭していました。将来を考えたのは高校3年生のとき。理容師を選択したのは「たまたまでした」とのこと。そのときお父様が、当時京都で一番厳しいと言われていた「へアーサロンヤマノ」への弟子入りを勧めました。

 「どうせやるなら一流のところへ行かな意味がない。山野先生のところは野球で言えば平安高校や。やるなら頂点をめざせ!!」と言うお父様に、野村さんは「ほな、強いところに行くわ」と、理容学校入学と同時に18歳で住み込みで弟子入りしました。

 「先輩は一番年齢が近い人で23歳くらいでした。修行時代は、朝起きて店の掃除から始まり、学校の授業、夕方帰って来て2~3時間店の仕事、店が終わったあと夜は練習という一日です。住み込みなのでゴミ出し、買い出し、食事の手伝いなどもあります。寝るのは深夜でした」

 スタッフ全員が住み込みです。店の規則で休みの日でも門限があり、自宅へ帰れるのは盆暮れだけでした。それでも11年間過ごし、ひたすら技術を追求できたのは、本人のやる気に加え、山野先生のもとにいる理容師全員が競技大会で優勝することを目指していたからです。

 

 

フェードカットに特化したこだわりのバーバー、
“見たこともない店”が6 月にオープン!

 理容学校の卒業間近、既にサロンの即戦力となっていた野村さんは、同級生たちが就活で必死になっている中、遙か先を歩いていました。学校帰りに友人と遊びに行くこともなく、生活の全てを理容に捧げてきた濃い時間。競技大会を目指す先輩たちと生活を共にし、切磋琢磨してきた日々は、まさにお父様が言った通り「頂点を目指す一流の環境」だったのです。

 実家に戻ってからは、アメリカやヨーロッパのバーバー雑誌や海外サロンのネット情報をチェックし、フェードカットを独自に研究・追求してきました。

 「この仕事はお客さんと一緒に歳を重ねていけるのが良いですね。流行や年齢でお客さんが入れ変わっていく美容室とはそこが違います。長い間来ていただけるので、同世代なら同じように自分も歳をとるし、小学生だったお客さんが、今では社会人になっていたりもします。人生を通したお付き合いができる、幸せな仕事だと思います」

 トップの長さや刈り上げの高さ、アレンジ次第でクラシカルにも大胆にも表現できるフェードカット。究極の刈り上げ技は、Instagramでも発信中。インスタを見て遠方からお客様がやってきます。満を持して6月13日(土)新しいお店をオープンします。フェードカットを強みに、バイカーやアメカジが好きな人、スタイルにこだわる人たちの希望を叶えるお店。ハーレーダビッドソンを店内に飾り、野村さんいわく「見たこともないお店」が向日市内に誕生します。

 

BARBER NOMURA
京都府向日市寺戸町渋川2-18
TEL 075-934-0334 (完全予約制)
Instagram barber_nomuraで検索

 

この取材は2月に行いました。本記事は「おとくにSanpo」4月1日発行号への掲載予定でしたが、その後思いもよらずおこったコロナ禍により、発行が延期となりました。理容業界への影響も相当大きかったなか、野村さんは取材時の言葉通り6月の新店舗オープンを実行されました。 その堅い意志と行動力に心から敬意を表します。(片倉 文恵)

 

 

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