おとくにの職人…P14

乙訓で活躍する職人さんにインタビュー

心を揺さぶられる花、もらった時の感動がいつまでも記憶に残るものを。

  フラワー装飾技能士の仕事は、ギフト用のアレンジメント、ブライダルブーケの製作、結婚式場やホテル、イベント会場のフラワーコーディネートなど、非常に幅が広く、奥が深い仕事です。

 「花は人の感情を左右するもの。贈り主ももらう方も心を動かされるようなものを作りたいですね。花は枯れても感動した気持ちは消えません。ネットで簡単にお花を買える時代ですが、お客様との対話が大切だと思うので、私はずっと対面でやっていきたいです」と永井さん。オーダーメイドをメインにし、永井生花(西向日本店)と洛西高島屋店の店頭に立ちます。お客様は地元のリピーターが圧倒的に多く、20年以上来店される方もいます。

 永井生花はお祖父様が創業し、三代続く老舗の花屋さん。小さい頃から花に囲まれ、花屋さんの娘としてのんびりと育った永井さんは、「将来のことは何も考えていなかったんです。何かを目指すということもなく、高校を卒業してなんとなく調理師専門学校に行ったんです」と苦笑します。

 「その後実家を継ぐことになり、花屋の仕事をしながら、業界の研修に参加していたのですが、私は研修生の中で、存在感がゼロだったんです。他の人が楽しそうに取り組んでいるのに、『自分には何もない!! 』と言うことに気づき愕然としました」

 そんなとき、家庭を持ちながらも世界を目指していたトップデザイナーの吉野美江子先生に出会い、永井さんは本気でこの仕事に取り組みたいと思いました。「それまでの自分は、不器用だから無理だと思っていましたが、自分の技術をコツコツ追求してみようと気持ちを切り替えました。他人より劣っているのだから、人の何倍も訓練したらいつかは追いつけると気づいたのです」

 

 

主宰する「Flower Create Hiroko」や、フラワー装飾訓練校から多くの技能士を輩出。

 吉野先生のレッスンに加え著名なフラワーデザイナーでドイツ人のグレゴール・レリッシュ先生にも師事し、永井さんは一歩ずつ技術の習得を積み上げました。そして8年後、30歳で全日本花卉装飾技術選抜選手権「東京大会」で 東京都知事賞受賞、 35歳でジャパンカップ入賞を果たし、その後「花キューピット」カレンダーのフラワーデザイナーへの抜擢などがあり、ようやく長年の努力が結晶し、業界で認められる存在となっていったのです。

 今年で36年のキャリアを持つ永井さんは、競技大会の審査員やフラワー装飾訓練校の“講師の指導”など様々な要職を務め後進の育成に尽力。多くの有能な技能士を輩出しています。

 本店の2階にある「FrowerCreateHiroko」は、フラワーデザイン教室です。初心者からプロフェッショナルまで幅広い層の生徒さんがレッスンに通っています。「生徒さんからよく、『私は不器用なので無理ですよね?』 と質問されますが、自分の経験から、『そんなことはないですよ』とお答えします。不器用な人は、器用な人が無意識のうちにすんなり出来る事も、何度もやり直すため、考えに考え抜いて技術に磨きがかかるのです。やる気さえあれば、むしろ器用な人より上達します」。

 季節や飾る場所によって、使う花や演出方法を変えながら、依頼人の思いに毎回真剣勝負で向き合うフラワー技能士。その楽しさを、永井さんは今日も多くの後輩に伝えます。

(文/片倉 文恵)

 

 

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永井生花( 西向日本店)

京都府向日市上植野町南開52

TEL 075-921-3854

http://www.nagai-seika.com/

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